インパルス溶着技術

SUBJECT

インパルス溶着の原理

POINT

外部熱源による熱伝導

このセクションでは「インパルス溶着」の様々な技術について解説していきます。
「インパルス」とはごく短時間に回路に流れる大電流・電圧、落雷の際の電流のこと。別名衝撃電流とも言われます。インパルス溶着は低電圧・大電流を流すことによって得られる外部熱源を利用し、熱伝導によって溶着を行う工法です。
では、インパルス溶着の原理から紐解いていきましょう。

物体の加熱方法

物体の加熱方法は「外部加熱」と「内部加熱」に分類されます。
外部加熱は、対象物に外部熱源から熱を加える方法で、「熱伝導/対流/熱放射」の3つの原理に分類されます。
内部加熱は、対象物自身が発熱体となり、内部から熱を発生させる方法です。「高周波誘電加熱」と「高周波誘導加熱」の2つに分類されます。

※内部加熱については高周波誘電加熱技術高周波誘導加熱技術にて説明しています。

熱伝導

触れ合った物体間で熱が移動する現象です。フライパンで調理した場合、フライパンの熱が食材に移動することで加熱されます。この熱は高い方から低い方へ、一方向に移動する性質を持ちます。

対流

流体(液体や気体)の移動によって熱が運ばれる現象です。暖房器具で温められた空気は体積が膨張し、軽くなるため上昇していきます。シーリングファンなどで上昇した空気を循環させることにより、効率よく部屋全体を温めることができます。

熱放射

熱伝導や対流のように物質を介して伝わるのとは違い、赤外線などの放射線(電磁波)によって熱が運ばれる現象です。「輻射熱」とも呼ばれています。トースターでパンが焼けるのも、この現象によるものです。

インパルス溶着の原理

「インパルス溶着」は低電圧・大電流を短時間通電することにより、ヒータ線などの抵抗体を発熱させ熱源として利用する方法で、熱伝導の原理を利用しています。

同じく熱伝導を利用した工法である接触式熱板溶着は、ヒータ等で加熱した熱板を樹脂に押し当てることで溶着します。インパルス溶着は、熱源であるヒータ線そのものを樹脂に押し当てて溶着します。

熱源となるヒータ線の発熱原理は、白熱電球と似ています。白熱電球は、フィラメントという細い金属線に電流を流し、発熱させて光を放出しています。金属線の部分が抵抗体になることでジュール熱が発生し、赤熱することで光を放ちます。

インパルス溶着におけるヒータ線も抵抗体を使用しており、大電流を流すことによりジュール熱が発生します。抵抗値の設計により、ヒータ線を瞬時に加熱することが可能です。

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インパルスウェルダーとは

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外部加熱によって熱可塑性樹脂の溶着を行う装置

インパルスウェルダーは、外部加熱(熱伝導)によって熱可塑性樹脂(プラスチック)の溶着を行う装置です。
低電圧・大電流を通電することにより、ヒータを瞬時に発熱させ、フィルムやシートの溶着に適しています。

インパルスウェルダーの基本構成

インパルスウェルダーにて樹脂の溶着を行う熱源は、「ヒータチップ(先端チップ)」と呼ばれます。
加熱したヒータチップを熱可塑性樹脂(プラスチック)に直接押し当てることで溶着します。
そのため、樹脂はヒータチップと触れ合った表層から溶融していきます。
ヒータチップの形状は、線状のものだけでなく、マウント形状(カップ形状)も製作可能です。

超音波溶着機のような振動を与えることがないため、粉が発生せずコンタミネーションを防止します。
振動に弱い電子基板やLEDのカシメ溶着にも適しています。また、不織布やフィルムの溶着も可能です。

インパルスウェルダーは、電源部・ヒータチップ・冷却装置で構成されます。

電源部

ヒータチップへの電力供給と加熱時間や出力の制御を担っています。トランス一体型や別体型、温度制御機能付きなどがあります。

ヒータチップ

電源部(トランス)に接続され、熱源となる部分です。形状は、線状やマウント形状(カップ形状)での製作が可能です。

切削加工タイプ

削りだしで製作するため、カップ形状や長さを自由に設計することができます。プレス成型タイプに比べてボスカシメ強度が20~30%アップ(当社比)、熱解析により適正形状設計と切削加工で耐久性が向上します。

※ラインアップにない形状については、別途相談となります。

プレス成型タイプ

当社独自の設計方法により、プレス成形でありながら先端で均一な熱分布となっており、溶着の安定化が図れます。

※ラインアップにない形状については、別途相談となります。

熱電対タイプ

ヒータチップに熱電対を溶接。TPH1000Sとの組み合わせで使用すると温度コントロールが可能となります。

※ラインアップにない形状については、別途相談となります。

面シールタイプ

一般的に封止や、不織布の面シールに使用されます。

冷却装置

ヒータチップおよび溶融後の樹脂を冷却するための装置です。電源部に組み込まれているものもあります。
インパルス溶着には必須であり、通常は圧縮空気(エアー)を使用します。
マウント形状のヒータチップでは冷却用ノズルが一体化されています。

インパルスウェルダーの特長

インパルスウェルダーの特長は以下の通りです。

1.ヒータそのものを加工物に当てて使用するため、熱効率が良い
2.溶着後、加圧したまま冷却することができるので、きれいな形状を成形できる
3.ヒータ先端が瞬時に加熱されるので、機械の立ち上がりが早く、温度ムラが少ない
4.無振動での溶着が可能

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ヒータチップの設計

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チップ中心の温度と均一な熱分布

熱源を直接押し当てる工法であるインパルスウェルダーは、ヒータチップの性能が重要となります。
ヒータチップを加熱した際の熱分布が均一であり、マウント形状(カップ形状)では、その中心部が最高温度となることが理想的です。

熱分布が不均一な例

溶着に使用しない外周が最も発熱しており、マウント形状の中心温度が低い状態です。
樹脂への熱伝導効率が悪いだけでなく、糸引きやヒータチップの焼き切れを起こす原因になり得ます。

熱分布の均一化(1):プレス加工式ヒータチップ

形状設計により温度分布の均一化を行った状態です。
マウント形状部の温度ムラが少なく、溶着品質が安定します。また、タクトタイムの短縮にも貢献します。

熱分布の均一化(2):切削加工式ヒータチップ

切削加工では形状の自由度も増すため、均一化の精度も高くなります。
マウント形状部の熱ムラがほとんど無く、安定した溶着が可能となります。また、プレス加工式に比べ剛性が高いことも特長です。

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インパルス溶着の種類

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シールや異材質の固定も可能

「仕上がりがきれい」「無振動による溶着が可能」など、インパルス溶着のメリットを生かし、医療・精密機器など、幅広い分野に活用されています。用途が広い分、様々な工法が開発されています。

ボスカシメ

インパルス溶着で最も一般的な工法です。溶着側(ボス)は熱可塑性樹脂とする必要がありますが、固定される側の材質は異材質(金属も可)でも可能です。円柱型のボスが一般的ですが、板状(リブ)のカシメも可能です。

外周カシメ(スウェージング)

カメラのレンズなど、直接的な加工による固定が難しい製品に利用される工法です。部品の外周に沿って立ち上げたリブのカシメによって固定します。

先端封止

充填後の流路など、円筒状の先端を封止することが可能です。部品挿入後の埋め込みも可能です。

シール

サージカルガウンの外周溶着など、不織布やシートの溶着に使用される工法です。薄物に限定されますが、メートル級の長さの溶着も可能となります。しかし、四角形などの形状によっては、熱分布が不均一になりやすいため注意が必要です。
電気は最短ルートを流れる性質があり、角部の外側は温度が低くなる傾向にあります。角部の溶着ムラを防ぐには、角部を極力大きなR形状にすることが必要となります。