超音波金属接合機の構成と接合のポイント

POINT

構成は至ってシンプル

超音波接合の工程を端的に表現すると「ワークを加圧保持して振動を加える」となりますので、その工程を構成する要素はシンプルです。しかし、求める接合品質を得るための条件は、ワークの材質や形状、組み合わせ、装置の周波数や出力、加圧力、ホーン形状などさまざまな要素が組み合わさります。そのため、まずは接合テストを行うことをオススメしています。

超音波金属接合機の基本構成

超音波金属接合機は、主に発振器と振動部ユニット、プレス装置と工具ホーン(超音波ホーン)で構成されます。

工具ホーン(超音波ホーン)は、振動部ユニットで発生した振動を増幅し、ワークに伝達することで接合を行います。
また、プレス装置を使用せず発振器と振動部ユニットと工具ホーンの組合せの機器もあります。

超音波金属接合装置の構成模式図

発振器

高周波電力の供給と共に、共振周波数の制御などを行っています。共振周波数は使用する工具ホーン(超音波ホーン)ごとに異なり、動作時の温度によっても変化します。また、接合中の加圧によっても変動するため、最適な周波数に調整する「周波数追尾回路」を搭載しています。

当社の超音波金属接合機は「定振幅回路」を搭載しています。定振幅とはホーン先端振幅を一定にする機能となっており、接合時の加圧力などにかかわらず常に設定した振幅になるように作動し、安定した接合ができるように制御しています。超音波振動用の電力供給と制御を行っているため、「発信器」ではなく「発振器」と表記します。

振動部ユニット

振動部は、振動子と振幅を増幅する固定ホーンで構成されています。固定ホーンの振幅をさらに増幅し、ワークに伝達するのが工具ホーン(超音波ホーン)です。工具ホーンは用途やワークにより、さまざまな形状で製作されます。

工具ホーンは無暗に追加工をしてしまうと、共振周波数のズレや振動モードの悪化に繋がる可能性が高く、接合不良やホーンの破断リスクに繋がります。そのため当社では、お客様による工具ホーンの追加工はしないようにお願いしております。

振動部の構成模式図

プレス装置

プレス装置は、接合プロセスにおいて重要な役割を担います。まずワークに必要な圧力を加え、接合面が密着するようにします。これにより超音波エネルギーが効率よく伝達され、強固な接合を実現します。 さらに、ワークの正確な位置決めや高さ調整を行い、接合精度を向上させるとともに、金属間の接合強度を均一に保つことで、歪みや破損を防ぎます。

工具ホーン

工具ホーンで振動を局所的に集中させることで接合面に強力なエネルギーを供給し、摩擦熱を発生させ接合を促進します。工具ホーンの形状や素材は、振動の伝達効率に大きく影響します。

超音波金属接合のポイント

超音波金属接合のポイントとしては、工具ホーンが接合品質に大きな影響を与えることを理解することです。

ナールパターン

工具ホーンに「標準的な形状」は存在しません。お客様の製品形状や接合形状、金属の材質、そして求められる接合強度など、さまざまな条件を考慮した上で、一つ一つを専用設計する必要があります。特に、ナールパターンはエネルギーの分布の均一さや接合部の強度や精度に大きくかかわるため、超音波金属接合を行う上で重要な要素となります。ナールとはホーンの先端に細かく刻まれた溝のことです。このナールの形状によって接合品質を向上させることができます。ナールの深さや間隔は、ホーンの形状や使用される金属によって異なります。ホーンの設計が十分でない場合、次のような不具合が起こる可能性があります。

    薄物に対して、ナールが高い
  • ワークへのダメージが大きくなる
  • ホーンとアンビルが接触することで、摩耗が早くなる
  • 厚物に対して、ナールが低い
  • ワークをグリップできないため、十分な摩擦力を得られず接合強度が得られない
  • ワーク表面を擦るだけなので、ホーンを磨耗させる

工具ホーン先端のナール位置を示した画像

ホーンの摩耗状態による接合品質の変化

工具ホーンは使用していれば、摩耗するものです。それを完全に避けることはできません。しかし摩耗により形状が変化したホーンは、グリップ力の低下によりエネルギーの伝達が不均一になり接合強度にばらつきが生じたり、特定の部位に過剰なストレスが集中してクラックや破壊の原因になることがあります。工具ホーンの材質変更も含め、摩耗しにくい形状をメーカーと一緒に検討することが大事です。

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